【AdGuardニュース】MicrosoftがAI倫理チームを解任、健康アプリが顧客の個人情報を共有、Mozilla vs トラッキング
今回のAdGuardニュースダイジェストの内容はこちら:
MicrosoftがAI倫理チームを解任、メンタルヘルスアプリがデータ流出、Firefoxがトラッキング防止機能を拡張、ドイツの人々はチャットコントロールに反対。
"No ethics — no problem?" Microsoft、AI倫理チームを解任
Microsoftが爆速でAIを自社製品に組み込み続けるなか、その組み込みが責任ある(responsible)方法で行われることを保証する「倫理と社会」チームを完全に解雇したと、The Platformerが報じた。
Microsoft人工知能(AI)部門内の「倫理と社会」チームの元メンバーは、マイクロソフトにはまだ「Office of Responsible AI」部門があるが、普通の社員はその原則を現実に適用すべき方法を知らないことが多い、と語った。
倫理と社会チームの役割は、この原則が具体的に何を意味するのかを説明し、ルールを作ることだったと彼は語った。
Platformerへの声明で、MicrosoftはAIに対するアプローチの変化を否定した。
マイクロソフトは、AIを搭載した検索エンジンモード「Bing Chat」を誰でも利用できるようにしたばかりで、現在AI競争にGoogleを上回っていて、勝ちたいと考えているのは理解できる。
しかし、倫理チームの解任が、Microsoftが何があってもとにかくAI導入を急ぐという示しであれば、ユーザーのプライバシーとセキュリティにリスクをもたらす可能性がある。
また、マイクロソフトが新Bingの成功を収益化する試みとして、チャットボットの応答にコンテキスト広告を挿入することを計画しているという報道も気になる。
このようなステップを踏む前にこそ、Microsoftはおそらく倫理チームからの意見が役に立てたはずだが、残念なことにそのチームはすでにクビにされている。
メンタルヘルスアプリ「BetterHelp」がFacebookとユーザーデータを共有
人気のセラピーアプリBetterHelpは、FacebookやSnapchatなどの広告主に、ユーザーの同意なしにセンシティブなメンタルヘルス情報を開示したとして、消費者に780万ドルを支払うことに。
BetterHelpはユーザーに対して、治療の目的以外には個人の健康情報を共有しないと繰り返し約束していたと、米国連邦取引委員会(FTC)は述べています。
同社は、患者のメールアドレスとセラピーに参加している事実をフェイスブックと共有したことで、Facebookは「患者と類似の消費者を特定し、広告のターゲットを絞る」ことができたとFTCは明らかにしました。
BetterHelp社がユーザーデータを悪用していたとの疑惑は2020年までさかのぼりますが、同社は否定を続けていました。
今後、BetterHelpは個人情報を共有する前に、ユーザーから明示的な同意を得なければならないことになるだろう。
精神的な危機を乗り越えた人々を支援することを目的としたこのプラットフォームが、信頼を裏切るとは不愉快です。
この件は、あるアプリがどのようなプライバシー重視を主張しても、収集したデータを第三者と共有することを技術的に止めることはできないことも示しています。
自分が安全であることを確認するために、お使いのメンタルヘルス系アプリをMozillaのプライバシーガイドに照らし合わせてチェックすることができます。
(ちなみにBetterHelpの場合、ひどい点数になています。)
310万人の患者データが流出、要因はトラッキングピクセル
雨降って地固まるとはよく言ったものです。
もう一つのメンタルヘルスプラットフォームである「Cerebral」は、2019年10月から最近まで、Facebook、Google、TikTokに患者データを送信していたことを明らかにした。
Cerebralは、うつ病、双極性障害、不眠症、不安症などのメンタルヘルス問題の治療に特化したテレヘルススタートアップ。
Facebook、Google、TikTokのトラッキングピクセルがCerebralのオンラインサービスに埋め込まれていたことで、310万人以上の個人情報が第三者にさらされることになりました。
個人情報が流出する量は、その人がプラットフォーム上で何をしていたかによって異なります。
氏名、電話番号、メールアドレス、IPアドレスを始め、予約や治療の詳細まで、さまざまな情報が流出した可能性があると、Cerebralは認めています。
同社は、その後、このピクセルを「無効化・再設定/削除」したと述べています。
トラッキングピクセルとは、広告、ウェブページ、電子メールなどのオンライン要素に配置される小さな透明な画像です。
広告主・マーケターが広告のクリック数やその他の指標を測定するのに役立ちます。
Cerebralのケースは、ヘルスケアプロバイダーがプライバシーに対して軽率な態度をとっていることのもう一つの例です。
このような態度は、医療機関が患者データ保護法に違反する可能性が高くなるだけでなく、データが悪用された場合、その顧客に多大な損害のリスクにつながります。
さすがMozilla:Firefox、トラッキング保護を強化
私たちがMozillaに好意的であることは周知の事実です。
何しろ、Mozillaは広告ブロッカーをChromeのMV3から救ってくれたのですから。
しかしそんな好評価は、Mozillaの具体的な動きの数々に基づいています。
今回も、Mozillaは、Firefoxブラウザのトラッキング・クッキーに対する保護をAndroidに拡張し、また別の良いことをしました。
Total Cookie Protection (TCP)として知られるこの機能は、ユーザーのブラウザにクッキーを植え付けたサイト以外からサードパーティのクッキーを「隠す」ことによって、クロスサイトのトラッキングをブロックします。
つまり、トラッカーは互いのクッキーを見ることができず、どこに行っても迷惑な広告を表示してくることもできなくなります。
この機能は昨年、Windows、Mac、LinuxのFirefoxユーザーにとってデフォルトとなり、今回はついにモバイル版にも実装されました。
また、トラッカーやスパマーから自分の本当のメールアドレスを隠すことができるFirefox Relayサービスが、ブラウザで直接利用できるようになったことをMozillaは発表しました。
一部のサイトでは、Firefox Relayの利用者にとっては、実際のメールアドレスの代わりにマスクされたものでサインインするよう、自動的に促されます。
「Relay mask でメールアドレスを保護しませんか」と、サイトサインイン時にFirefox Relayがユーザーに提案 ソース:Mozilla
Mozillaは、プライバシーを重視していることを再び証明しました。
Firefoxのユーザーは、コンピュータでネット閲覧をしているか、スマホでネット閲覧をしているかに関係なく、トラッキングクッキーから保護されるようになったのです。
よくやりました、Mozilla!
ドイツ、メッセージをクライアント側でスキャンする、というEU委員会の計画に反対
EUが提案した児童性的虐待資料(CSAM)のメッセージスキャンは、ドイツ連邦議会の特別公聴会で広く批判を浴びた。
ドイツ連邦議会のデジタル委員会の会議に関する公式報告によると、この計画は技術的に非現実的で、「法的に疑問がある」、「プライバシーに対する計り知れない脅威」であると、会議参加者に言われた。
Meta社やApple社とその他の大手ハイテク企業が人々のデバイス上のメッセージの内容を分析することを義務付けるこの法律案は、CSAM素材の拡散を止めることができず、「大規模な監視インフラ」を作るだけだ、と専門家たちは述べています。
この法律案は、禁止コンテンツのデータベースと照合できるような既知のCSAMだけではなく、テキストメッセージ内の新しい内容や「グルーミング」なども発見して止める責任をテック企業に対して負うというもの。
また、このような大規模な取り組みだと、1%のエラー率でも数十億の誤検出が発生し、無実の人が告発される可能性があると、専門家らは指摘した。
私たちAdGuardも同様の懸念を表明しています。
この法律が成立すれば、EUのプライバシー保護が損なわれ、エンドツーエンド暗号化が弱体化する可能性があるります。
欧州評議会で発言力を持つ大国として、ベルリンがEUレベルでこれらの懸念を提起し、この法律が現在の形で成立するのを阻止しようとすることを期待しております。