Meta、直接Facebookからアプリをダウンロードできるストアを計画
年間広告収入1,000億ドルを超えるテック大手であり、アドテクノロジー大手であるMeta社が、現在、プレイヤーの少ないアプリストア市場への参入を計画している、とThe Vergeが報じている。
そのきっかけは?
皮肉なことに、(Meta社自身も一員である)「ゲートキーパーたち」の力を抑制するように設計されているEUの個人情報保護法であるデジタル市場法(DMA)がきっかけとなっている。
ただし、アプリストアの場合、市場はGoogleとAppleの2大プレイヤーに大きく二分されており、一般に「デュオポリー」(2社の独占)と呼ばれる状態だ。
そのデュオポリーが今、少なくともDMAが来年から全面施行されるEUでは、綻びを見せ始めている。
この法律では、「ゲートキーパー」らが自社のサービスを優遇することが禁止され、なかでもユーザーが競合アプリストアをインストールできないようにし、自社のアプリストアをデフォルトかつ唯一の選択肢とすることが禁じられる。
これは、程度の差こそあれ、アップルとグーグルに当てはまる。
グーグルはAndroidでのサイドローディングを認めているが、アプリ内課金システムをGoogle Playストアにバンドルしていることで、サイドローディングが開発者にとってあまり魅力的でないようにしている。
一方、アップルは長い間、完全に"壁に囲まれた庭"だった。
しかし2024年3月6日以降、つまり「ゲートキーパー」らがDMAに準拠しなければならない期日以降、アップルはEUにおいてiOSでのサイドローディングを許可しなければならなくなる。
Meta社のアプリストア野心
独自のアプリ配信システムの内部構造という点でMeta計画について現在はあまり情報ないですが、その主な目標は明確です。
ユーザーがやGoogle Play StoreやAppleのApp Storeを訪れることなく、Facebook広告をクリックして直接アプリをダウンロードできるようにすることです。
Metaは、ダウンロード・プロセスにおけるこのワン・ステップを省くことで、ユーザーがアプリをインストールする可能性を高めることができると主張している。
Metaはこの新しい方法を、開発者たちにとってはコンバージョン率を高め、結果として収益を上げる便利なショートカットとして宣伝している。
この理屈は論理的であり、なぜか自分のアプリ配信・宣伝にまだFacebookを使っていて、アプリをダウンロードする際のわずらわしさを減らしたいと考えている人々には有用かもしれない。
Metaは、今年後半にAndroidアプリ開発者の少人数で、新しい広告アプリインストールスキームの最初の試験運用を行う予定であると報じられている。
iOSに関しては、私たちが仮に「Metaのアプリストア」と呼ぶものをアップル愛好家が体験する番は、DMAの施行が一段落した後となるようだ。
デベロッパーにとって魅力的な「手数料無料」
私たち AdGuard が、Google Play Store と Apple App Storeの両方が市場で独占的な地位を築いていることに対して、常に批判的であることは周知の事実です。
開発者は、最大30%にも達する高い手数料を請求されながら、不明瞭な審査プロセスを受けなければならず、薄弱な理由でアプリを禁止すされる恣意的な決定に直面したりなど、アプリストアに掲載され続ける“特権”のためにすべてを妥協する心構えが必要である。
これは、どちらかというとアップルのほうに当てはまるだろうが、多額の手数料に関しては、アップルもグーグルも同じように恥知らずである。
Metaは、デベロッパーと既存アプリストアの間で長く続いている対立を利用し、課金しないことで開発者たちを誘い込もうとしているようだ(最低でも最初のうちは)。
もしMetaが本当にアプリ内収益のほんの一部も取らないのであれば、開発者は自分の好きなアプリ内課金システムを使うことができる。
これもまた、AppleやGoogleのアプリストアとは良い意味で一線を画すことになるだろう。
アップルもグーグルも、自社のプラットフォームで別のアプリ内課金システムを認めるようプレッシャーをかけられている。
韓国のユーザーに対してサードパーティー製システムを使ったアプリ内購入の支払いを可能にするなど、少しは譲歩している。そして昨年、Googleはインド、日本、欧州経済領域を含む、より多くの国に同じ支払いオプションを展開した。
これらの変更は、ゲートキーパーらが自分たちのプラットフォームで他のアプリ内決済を機能させることを要求するDMAを見越した水面下でのテストと見ることができる。
しかし、これまでのところ、アップルとグーグルからの譲歩には重い縛りがついている。
開発者は、若干の割引率ではあるが手数料を支払い、受け取ったすべての支払いについてはストア側に伝えなければならない。このため、サードパーティ製の決済システムを利用する魅力は薄れている。
したがって、Meta独自のアプリ配信プラットフォームによって、開発者がさまざまな方法で支払いを受けられるようになり、乗り越えなければならないハードルが少なくなると、大きな差が生まれる可能性があります。
ここまでは、おとぎ話のような話ではないでしょうか。
ワンタップでMeta広告から直接インストールできるアプリ、デベロッパー手数料なし、ユーザーにとってはより安いアプリ価格......夢のようなWin-Winか?
いい話に聞こえますが、私たちは懐疑的であり続けます。
考えられる問題
The Vergeの取材に対し、Metaの広報担当者であるトム・チャニックは、新しいアプリ配信プラットフォームがアプリ開発者たちに提供する新たな機会について、明るい口調で語った。
「我々は前から、開発者によるアプリ配布を手助けしたい思っており、新たな選択肢が増えれば、このスペースでの競争をさらに激化させるだろう。
開発者たちは、自分のアプリを必要としている人たちへ簡単にアプリを届けられる方法はもっと多くあるべきだ。」
一方では、進歩や革新の原動力として、私たちAdGuardも常に競争の激化を支持してきています。
ですから、少なくともEUでは、今後アプリストア市場で競争が激しくなることは歓迎すべきことです。
結局のところ、これはMetaに限った話ではないのです。
マイクロソフトも独自のアプリストアを立ち上げるかもしれないし、
F-Droid、APKPure、Aptoideのような小規模の独立系アプリストアについても忘れてはなりません。
これらはすべて、DMAが作り出すより公平な競争の場から恩恵を受けることができるだろう。
もう一方では、Metaはアプリ配信市場において新しいプレーヤーではあるかもしれないが、プライバシーに関しては悲惨な業績を持つテック大手であるため、この新しい領域への進出はプライバシーに関する懸念も引き起こします。
Metaは、アプリストア市場への参入は開発者を助けたいという思いからだと主張するかもしれないが、もっと利己的な利害が絡んでいるかもしれません。
Metaは間違いなく、アップルが2021年に iOS 14.5 の App Tracking Transparency(ATT)機能で開始したトラッキング(追跡)の取り締まりの最大の敗者となった。
この機能により、すべてのアプリが、他社のアプリやウェブサイトを横断してユーザーの行動を追跡する許可を求めることを余儀なくされた。
これにより、そのような追跡をオプトアウトできる簡単な方法(iOS通知で「App にトラッキングしないように要求」をタップ)がユーザーに与えられ、、iOSユーザーの4分の1以上がアプリに追跡させないようになった。
トラッキング(追跡)はメタ社のビジネスモデルにとって不可欠なものであり、同社の主な稼ぎ頭であるターゲティング広告の原動力となっているからです。
トラッキングが減るということは、パーソナライズされた広告が減るということであり、ひいては効果的な広告キャンペーンが減り、それによって128億ドルの収益を失うと予想されていたように、Meta社の収益が減ることになる。
そしてMetaは、これらのiOS制限を回避する抜け穴を見つけようとしたなかで、おそらく独自のアプリ配信プラットフォームを立ち上げることが救いになると考えたのだろう。
Meta独自のアプリ配信プラットフォームの正確な輪郭は、まだ謎に包まれています。
アプリ開発者たちに対するMetaのおいしい条件は単なるおとり商法であり、一旦誘い込んだらルールを変えるという可能性もあります。
もしくは、Metaは、手数料なしにす代償として、ユーザーを無制限で追跡できる、という取引をしようと望んでいるのかもしれません。
いずれにせよ、私たちAdGuardは、Metaのアプリストアなるものの状況を注意深く追いかけ、新しい情報が明らかになり次第、改めてユーザーとブログ読者の皆様にお知らせするつもりです。